INTERVIEW
山内が人材ビジネスの
今を切る!

20年後の日本を素晴らしい国のままで

 日本はきれいで安全な、暮らしやすい良い国であると誇りを感じています。差別的な身分制があるわけでもなく、誰もが自由に未来を選べます。
しかしながら、今後さらに加速する人口減少やAIによる自動化といった流れの中で、私が見据えているのは20年先です。私の小さな末娘が社会に出る20年後に、まともな労働市場、まともな日本であるのかといえば、大きな疑問です。今、ここにエネルギーを注ぎ、導いていかなければならないと強く感じています。
世の中の「働き方」についての考え方が大きく変わっていく中、弊社のミッションは今後7~8年ですべてが終わると考えています。そうでなければいけない。20年後にまともな日本を創ろうと思えば、完了させなければいけない。そういう想いをもって取り組んでいます。
少しさかのぼりますが、バブル崩壊後、日本は労働環境を抜本的に見直すべきだったと思っています。いまだに春になれば、「今年のベースアップは2%となりました」との春闘の報道。これは、人件費が一律で2%上がるということです。果たして企業の成長率が平均して2%以上をキープしているかといえば、そんな会社は限られているはずです。そこで原資が出ない会社は、いつでも雇用調整できる非正規社員を増やそう、ということになります。これが日本全体で今起こっている格差問題だと思っています。非正規問題というのは、昔は良かった日本型雇用のなれの果てだと理解しています。
日本の平均寿命が60歳代だった時代に作られた年金制度が、いまだ残っているのと同じように、本来、時代背景とともに変えていくべき制度が変えられていません。さきほどの春闘も、1950年代から60年以上も脈々と続いているのです。
今、政府によって「働き方改革」が推進しているように、誰かがメスを入れていかなきゃいけない。ここが人材ビジネス経営研究所の一つの意義だと考えています。 私は、人材派遣や請負の業界で育ち、またコンサルティングを行う中で、業界に真正面から向き合い、苦楽を共にしていろんな人の笑顔を作ってきたという自負があります。「正直に胸を張ってできる仕事で、業界を盛り上げていきたい」という強い想いは、ずっと持ち続けています。ですが、残念なことに世の中からは「派遣」というだけでひたすらバッシングをされている実状があります。派遣制度のすべてがNOではありません。派遣社員として働くことがベストとされている人も一定数いるのです。例えば、自分の意志ひとつでは出勤することが難しい人。誰かが伴走しないと会社で長く務めることができない人。彼らを支えるのは、私は派遣会社だと思っています。

人材派遣業界専門のコンサルタントになった経緯

 前々職は、請負会社(後に派遣会社)で働いていました。請負とは、製造現場において、ラインをまるごと請け負う成果報酬の仕事です。常に生産効率を上げていかなければ、赤字になってしまうこともあります。
私はもともと他の人が気にならないような細部にも気が付きやすく、また突き詰めたいタイプのために、現場改善手法が自然と身につきました。生産性を上げて黒字化したり、品質上げたりというような仕事が、コンサルティングに近いと生産性本部に行った際に知りました。その後、日本最大のコンサルティングファームである船井総合研究所に入社しました。
とはいえ、転職当初は人材派遣業界のコンサルティングをするつもりはありませんでした。前々職の派遣会社にとってライバルとなる同業他社を経営支援することは、育てていただいたご恩を無にすると感じたからです。
ちょうどそのころ、民主党政権による派遣法改正案(製造派遣・登録型派遣を禁止にする)が国会に出され、世間を賑わせたこともあり、コンサルティング依頼が、業界経験者である私に入るようになりました。
後ろめたい気持ちを抱えながらも心を決め、前々職の元上司の方に謝罪に行きました。そのとき元上司は、「派遣会社のコンサルをやるんやろう?うちのノウハウも全部使っていいから頑張れ。その代わり、お前は日本一のコンサルになれ。それがお前の恩返しや」と言ってくれたのです。さらには、「俺は、人材ビジネスは“人材教育ビジネス”だと思って、社員教育にはお金をかけてきたし、それをよしとしてやってきた。その結果、お前が船井総研のコンサルタントになったのなら、逆に俺がお前に感謝せなあかん」と。頭が上がりませんでした。
そして、これ以上、この会社に泥を塗るわけにいけないと、派遣業界を変革していくコンサルタントになることを強く誓いました。
船井総研は、当時は世界一自由な会社と言われていました。大好きな船井流の考え方のもと、とにかくがむしゃらに頑張り、常に数値目標を達成していきました。その上で、私は業界変革のためにブログやセミナーで発言し、自由に活動させていただきました。船井総研の看板があってこそできたことも大きかったです。その後、会社の方針が変化してきたことで、純粋に人材派遣業界の未来を担うため、独立を決意しました。

「日本型経営システムの役割は終わった」

 20年後の日本に危機感をもたらしている格差問題、少子化問題は、私はその本質を正社員制度だと捉えています。 日本は戦後の焼け野原から世界有数の経済大国となりました。日本人に合った年功序列、終身雇用という労働環境といった日本型経営システムは、経済成長の過程で見事に定着し、日本をアメリカに次ぐ豊かな国として育て上げました。
日本の正社員制度が世界各国と大きく違うのは、「職能給」を採用していることです。能力主義を掲げながらも「みなし」で給料を上げる国なのです。つまり、1年間一つの会社で仕事をした=能力が上がったとみなして定期昇給をするのです。長く会社に所属することで、会社により貢献している、となるのです。
また、日本の雇用は新卒社員が中心です。会社との包括的雇用関係を結び、職務は入社後に決められます。会社が強力な人事権を持っているのです。
一方で、先進国の多くは、職務を決めて人材を雇う「職務給」です。例えば営業職、マネージャーができる人、マーケティングの人といった個々のスキルを問われます。
もう一つ、日本の労働環境の世界と大きく異なる特徴として、社員を家族的に囲い込み、特別な理由がない限り、解雇をしないことです。アカデミックに言えばメンバーシップ型雇用のために、例えば営業職に配属されたものの、成績が悪いからといって解雇されることはありません。配置転換によって社員は守られるのです。ですから、正社員は仕事ができなくても、給料が毎年少しずつ上がっていきます。
バブル崩壊までの高度成長期はこれでよかったのです。年々市場は増え、仕事は増える一方でしたから。ところが景気が悪くなると、会社は一斉にコスト削減をはじめます。仕事はできないが解雇もできないお荷物社員が残ります。そこで生まれたのが、リスク軽減のために正社員を増やさず非正規社員を増やそうという考え方です。フリーターという言葉が出始めたのもちょうどその頃です。今、非正規社員の代表格としてやり玉に挙げられている人材派遣制度は、企業の生き残り策として発展してきた部分も大きいと思っています。
2008年末、リーマンショックにともなう派遣切り問題として、「年越し派遣村」が大きく報道されました。人材派遣制度が問題視された象徴的な出来事です。これにより、規制緩和を進めた小泉内閣が批判を浴び、民主党政権が誕生しました。実際の派遣社員人口は、全労働者のうちたったの2%にもかかわらずです。政治のネタに利用されたとしか思えません。
さらに、大手の製造業などは労働規制が厳しくなる背景から生産拠点を中国、タイなどの海外に移したことで、産業空洞化がさらに加速しています。大義名分のもと、正社員という身分だけで守られる日本。今、世界で再び見直されているジャパンブランドを支える非正規労働者。日本の格差問題、少子化問題は、こうした労働環境にあると考えます。果たしてこれでよかったのでしょうか?

ジャパンクオリティーを支える労働者のキャリアアップ

 2020年のオリンピック終了後、世の中は大きく変化するでしょう。景気は悪化し、労働人口減少の中、自動化は加速し、単純労働が日本からどんどん消えていきます。例えば10年も経てば高速道路は完全自動運転が可能になり、長距離ドライバーは不要になるでしょう。小売店も飲食店も店員はごくわずかでしょう。
そこで、近い将来、職を失う恐れのある非正規労働者を教育できるのは、派遣会社であろうと私は考えています。政府も、2015年9月の派遣法改正に伴い、派遣会社に、キャリアコンサルティングを行うことや、キャリアアップ制度を義務化しました。派遣労働者は、お給料を得ながら学ぶ機会を与えられることで、さらなるキャリアアップを図れるという制度です。これは単純労働を行ってきた人材が、より仕事の幅を広げ、必要とされる領域で活躍するための施策だと思っています。
日本は、学歴、職歴、年齢はどうあれ、生産性を上げた人は見合った対価を得られる社会にしなければ誰も頑張れなくなります。正社員が権利を主張してふんぞり返り、身分制度としての非正規労働が今後も続けば、日本は豊かで安全な国として存続することは難しいと考えます。
ですから私は、強い危機感を持っています。早く転換しないと間に合わないのです。なのに、2019年4月施行予定だった働き方改革法案が政治スキャンダルによって一年先送りになっていることは、大きな損失です。5年や10年で取り返せるでしょうか。 人材派遣業界の存在によって、多くの労働者が自身のキャリアプランに合った教育を受けることができ、安心して働けるという時代になっていかなければいけない。 世の中にも、このことをもっと伝えていきたい。日本の未来のためにも、今不安な労働者のためにも、人材派遣業界の地位を確実に向上させることが、私の使命です。

「ゼロイチを生み出せる奴らはここにいる!」

 これまでの日本企業は、高度成長期もバブル崩壊後も、中学、高校、大学と、横並びに教育を受けてきた新卒社員を大事にしてきました。そして、時計のギアのように、規格にのっとった人材を育成することで会社を回してきました。
ですが、そのような歯車のような人なら、今後はロボットやAIでまかなえるわけです。これからの時代に必要とされる人は、0(ゼロ)を1にできる人です。全体の約1割未満の人でしょうか。常識や既成概念に囚われることなく生きてきたせいで、世間から認められてこなかった人たち。
0を1にできる可能性を秘めた人たちは、同じようなリクルートスーツを着て、周りと同調できる人材には少ないと思っています。一方、フリーターや派遣社員の中には、周りと同調できない、歯車になれない人材は多くいると思っています。今まで日本社会からはそういった人材はアウトローで役に立たないと弾かれ、多くの人が就職を諦めてきました。私はそんな人たちに「いやいや!ちょっと待て。皆さんが将来の日本の宝なんだよ!」と強く励ましたいのです。
例えば派遣社員やフリーターの中には、私と同じようにアスペルガー要素を持っていて、一般的な仕事は全くできないけど、飛行機の型番全部言えるとか、便を全部言えるとか、電車の駅を全然言えるといったような素質をもった人が少なからず存在します。「その能力を仕事で活かせるよ!」という人が一定数いるのです。彼らと同様、正社員として上手く働くことができなかった私は、その能力を使ったからこそ結果を出せていることを話してあげたいのです。「俺も元ゲーマーだった。ニートだった。でも、それを人生の強みに置き換えたら、今こんなふうに活躍できている」声かけをすることで、目の色が変わる人もいると思っています。派遣社員やフリーターとして働く人のうちの1%でも本気スイッチを入れたい。彼らの意志と才能を、再び社会に向けて目覚めさせたいのです。これは大学の先生でなく、私のような元ニートが言うから説得力があると思っています。
「アスペルガーのままでいいんだよ。それってマイナスじゃなくて、超強力な武器なんだよ。必殺技なんだよ。もっと使え!もっと人生楽しもうぜ!」と、全国の派遣会社一社一社でそういった働きかけができれば、日本も少しは変わるかなと考えます。
人材不足が叫ばれる今、派遣業界への偏見も重なり、人材派遣会社の社員も不足している現状があります。派遣社員への可能性と熱い想いをもって取り組むことで、人材派遣会社の存在意義は向上し、良い人材が派遣業界へ集まって欲しいと願います。 そのためには、人材派遣業界全体が、めまぐるしく変わる法律をきちんと理解し、遵守していくことがとても重要であると考えます。弊社の勉強会もコンサルティングも、法律の理解に大きなウェイトを置いています。 そのうえで、世間に、人材派遣業界はこんなに泥臭いことやっていて、こんなに喜んでくれる人がいるということを、堂々と伝えたい。「派遣は悪」と言われる業界から、「派遣で働こう」と言われる業界へ。
これを実現していくのが弊社の存在価値であり、目的なのです。